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『アフガン戦争を憲法9条と非武装自衛隊で終わらせる』(2)

2010年04月03日 10:39

<書評の続きです>

打開すべき問題はいくつもある。
・ 形勢不利となっている対テロ戦の戦局をどう転換・挽回するのか?
・ 誰が、どのようにタリバンら「敵」との「対話」を進められるのか?
・ 過激思想のタリバンが生まれ続ける根をどう断ち切るのか?
などなど、

伊勢崎氏は、決定的な打開策はないとしたうえでだが、まさにこの本でこれらの問題の打開策を示そうとしている。
そして、日本こそが、このメインプレーヤーになるべき資格と責任があるのだと訴えている。

この本では、具体的にその方策を練るため色々な当事者たちと協議を重ねてきた経過が報告されている。
元タリバン幹部、カルザイ大統領、アフガンの女性議員、NATO軍の司令官、アフガン・パキスタン・サウジの大使などなど・・・これだけでも凄い!

その結果として生み出された具体策が「SSゾーン構想」であり、ISAFからもそれへの支持を取り付け、その具体化のために開催されたのが「11・23東京会議」。会議で出されたコミュニケが末尾に載せられている。

Shared Security Zone: SSゾーンとは、名前の通りSecurity(安全保障)をShared(共有された)地域の事である。安全保障の責任を共有するのは、まずパキスタンとアフガニスタン両国、そしてその地域コミュニティーが想定されている。具体的にそれをどう作り、そこで何をするのか?は、是非本をとって読んでほしいし、書かれている事以外にも色んな事が出来そうに思う。しかし、一番大事なのは、このプランが何を目的にしているのか?だろうと思う。
今は、アメリカもカルザイ政権も、そして国連すらも全く信頼されていない。警察も軍も汚職だらけで、これまた信頼されていない。だからタリバンに「人心掌握」されてしまっている。しかし、伊勢崎氏が一貫して書いているように、対テロ戦では、実は「人心掌握」戦こそが主戦場なのである。狂信的なタリバンが生まれ続ける根っこにもこれがある。

では、どうやってこれに勝つのか?という戦略として生み出されたのが「SSゾーン構想」だ。
つまり、「人心掌握」戦に勝つ事が目的であり、「SSゾーン構想」はそのための手段。
この事を理解しないと、このプランの表面的な困難さを理由に頭ごなしに否定する人たちが出てくるように思う。

自分も以前にお玉ブログで、「北朝鮮問題を平和的恒久的に解決する方策について」を提起した時にも、同様に木(個々の手段)を見て森(目的)を見ない反応がかなりあった。

だから、伊勢崎氏が、なぜ、何のために、こうした構想を提起し、実現しようとしているのか?という意識を持って読んでほしいと願う。

これは、「なぜ非武装自衛隊を派遣するのか」という章でも同じだ。
なぜ日本でなければならないのか?
なぜ「非武装自衛隊」でなければいけないのか?
が、書かれている。

その上で、我々護憲派に、現実的問題を突きつける。
前文で書かれている「積極的平和主義」を実現するためにこその「9条」であるはず。
その護憲派が、平和構築のための非武装自衛隊派遣に「反対」していていいのか?
という問題だ。
私も、これは護憲派が真の多数派になるためには、どうしても越えなければならない壁だと思っている。

また、なぜ民間人でなく、自衛隊員=軍人でなければならないのか?
という疑念を持つ人がいるかもしれないが、これは軍事専門家でないと出来ない仕事なのだ。
これについては、松竹さんも以前にこちらの記事で解説しているので、参考にされたい。

「11・23東京会議」(外務省を巻き込んでこれを開けた事だけでも凄いが)の報告と末尾のコミュニケも必読箇所だ。
ここも何のための会議なのか?の視点で読むと、なぜ敢えて非公式会議にしたのかがよく理解できる。私もこの成果が、公式な政府間の議論に発展していく事を心から願わずにはいられない。

「おわりに」では、伊勢崎氏がなぜここまでアフガンにこだわるのか?が本音で明かされている。
自分が「力の空白」を心配し、泣いてまで反対する北部同盟の司令官たちを説得して武装解除させたのに、国軍と警察でそれを埋めるという約束を守れず、結果的にタリバンの反撃・反攻を許してしまったことが「引っかかって」いるのだと。
もっともこれは、DDRを担当した伊勢崎氏らの責任ではなく、新国軍や警察の整備を担当したアメリカやドイツの責任なのだが…

氏は、アフガニスタンの問題は、最初から間違いの蓄積なのだという。
「そもそもが間違った戦争だったと思う」と言う。

しかし、現実に始まってしまい、過ちが積み重なったいるアフガン戦争をただ批判する評論家がいくらいても、アフガンに平和は訪れない。氏は、自らが巻き込まれ、利用されてしまった戦争を、自らの責任として本気で終わらせようとしている。そのための方策を現実に実施させるために現実に行動している。

この事の「凄さ」を是非この本を読んで理解してほしいと願う。

自分を巻き込み、ここまでアフガンをめちゃくちゃにしたアメリカと日本への怒りを抱きながらも、

「やるなら、建設的に。」
「それは僕なりの愛国心かもしれない。」

と伊勢崎氏は結ぶ。

一人でも多くの人に是非読んで欲しい本当に「凄い」本である。


コメント

  1. sv400s_dracin | URL | 7wiJt.qw

    今読んでます…ひきこもり中ですけど…

    こんにちは…待ってました、Looperさん…私は大阪中央図書館に注文を出して、先週から読んでます…得意の速読しないようにゆっくり読んでます…かっ飛ばして読んでしまいそうなので…基本は1月での講演会の内容をより詳細に説明されてるようで、わかりやすいです…なぜ、日本なのか、なぜ、自衛隊なのかということがわかりやすく書いてありますね…これで、わからないと読解力を疑われそうです…ただし、わかるから賛成なのか と問われると賛否は考えてるところです…いま、命が喪われていくアフガニスタンの人には、そんな時間はないでしょうけど…というのも、これで上手くいったら…上手くいくほうがいいに決まってますけど…恒常的にアメリカの片棒を担ぐ事にならないのか?っていう疑問です…「マッチポンプ」のポンプの役目を負わされないのか?ってことですけど…でも、それは政治家の仕事ですね…もっとも、平和の普及…「積極的平和主義」を実現するためにこその「9条」を広げるという事にはいいことなんだと思います…「伊勢崎賢治の平和構築ゼミ」の最後の章にも書いてあったような…ノルウェーが「9条」を持っていたら、もっと有効に活用した云々…ノルウェーにできて、日本にできないわけないとも思いましたけど…「伊勢崎賢治の平和構築ゼミ」は速読しただけで、(枕元に)積読継続中なので、内容把握に自信がないですけど…私は「お玉さん」のブログでもコメントしたけど、「平和」が目的であって「9条」は方法でしかない、とてもいい加減な(仮)護憲派なので、ゆっくりこの本を読みながら、考えていこうかな と思ってます…
    追伸…記事中にリンクされた「超左翼おじさんの挑戦」の記事のコメント欄を読んだら、正直頭が痛くなりました…悪意をもって理解しようとしない人はどこを読んでいるのだろうか…あーいうコメント欄を読むと「Twitter」に可能性なんてあるんだろうかと疑問に思います…もっとも、改憲派だけじゃなく、護憲派にも頭の痛い人がいるけど、「9.11は~」「御巣鷹山は米軍~」云々って、聞くのも痛々しくて、たのむから、「9条」とか言わないで欲しいと願わずにはいられません…

  2. キンピー | URL | Il2q9UN2

    伊勢崎さんの本を何冊が読んだ人ならスラスラ理解できますが、一冊も読んだことの無い人には突拍子の無い話に思えるでしょうね。
    だから人に勧めるには同時に解説も必要のようです(苦笑

    建築で思い出しましたが、地震の多い日本の建築は西洋とは違って、基礎工事から職人さんがやります。
    一方西洋では基礎工事なんてなくて、いきなりレンガを積んでいくことが多いそうです。
    日本の場合一般建築はもとより、城の石垣の下にだって、植物を敷き詰め、木で筏を組んだ上に大小さまざまな石を積み上げるそうです。
    これは地震によって一気に崩れないための工夫で、年季の入った職人技です。
    基礎からプロフェッショナルを揃える。
    また現場環境への配慮も伊勢崎さんのような人がやると一味違ってくるのかも知れませんね。

  3. Looper | URL | QpqRtz9Y

    Re: 今読んでます…ひきこもり中ですけど…

    sv400s_dracinさん、

    > こんにちは…待ってました、Looperさん

    な・なんと…待って下さっていた方がいたとは…(涙
    もし松竹さんから直々にお願いされてなきゃ、もう出すの止めてたかも…

    で、実は、文章書くのが苦手で遅筆なくせに妥協が嫌いというか…お蔵入りした記事・コメントはかなりあります。

    > ただし、わかるから賛成なのか と問われると賛否は考えてるところです…

    それで当然だ思いますし、それこそ議論で深めあっていけばいい。
    私も全面的に賛成ではない所がありますし、伊勢崎さんもよりよい提案があれば受け入れる柔軟さをお持ちな事は、彼がしてきた事をみれば明らかでしょう。

    > 私は「お玉さん」のブログでもコメントしたけど、「平和」が目的であって「9条」は方法でしかない、とてもいい加減な(仮)護憲派なので、ゆっくりこの本を読みながら、考えていこうかな と思ってます…

    「いい加減」は、「良い加減」なのですよ。
    何事も、極端はいけません。(笑

    「9条」は、現実に役に立ってきた、外交上使える強力な武器なんだから、もっと使うべしというのが私の以前からの主張です。「9条」を持ってるからこそ外交上の権威・圧力を振るえるシーンが現実にあったわけですからね。武力によるものだけが安全保障だと思ったら、大間違いです。

    > 追伸…記事中にリンクされた「超左翼おじさんの挑戦」の記事のコメント欄を読んだら、正直頭が痛くなりました…悪意をもって理解しようとしない人はどこを読んでいるのだろうか…あーいうコメント欄を読むと「Twitter」に可能性なんてあるんだろうかと疑問に思います…もっとも、改憲派だけじゃなく、護憲派にも頭の痛い人がいるけど、「9.11は~」「御巣鷹山は米軍~」云々って、聞くのも痛々しくて、たのむから、「9条」とか言わないで欲しいと願わずにはいられません…

    いやはや…あれはひどいです。
    私も思わず苦言コメント入れちゃいましたが、よけい火に油を注ぐ結果になったかも?(苦笑

    もっとも、自分はウヨちゃんがああいう外したイタコメ入れているのは自滅してるだけなのでさほど気にならないのですが、むしろ左翼側、特に共産党の盲信者のコメントには辟易します。運動をしていて、一番頑固で扱いにくく、市民的視点を欠き、幅広い共闘を邪魔するのが実はああいう困ったチャンたちなんです。

    >「9.11は~」

    私の知り合いがきくちゆみを呼んで講演会を行うらしく、案内が来ました。orz
    こっちもホントに困ったチャンです。

  4. Looper | URL | QpqRtz9Y

    Re: タイトルなし

    キンピーさん、松竹さんの所ではお疲れ様です。

    > 伊勢崎さんの本を何冊が読んだ人ならスラスラ理解できますが、一冊も読んだことの無い人には突拍子の無い話に思えるでしょうね。

    そこが私も気になった点です。
    どれだけ当たり前の事を言っても、森が見えない、見ようとしない人というのは左右問わず必ずいます。
    これって、松竹さんの所のコメを見れば良く分かりますね。(^^;

    > これは地震によって一気に崩れないための工夫で、年季の入った職人技です。
    > 基礎からプロフェッショナルを揃える。
    > また現場環境への配慮も伊勢崎さんのような人がやると一味違ってくるのかも知れませんね。

    アマチュアにはアマチュアの自由な発想と行動の良さがある。
    けれど、やはり紛争現場では軍事知識を持ったプロが必要だし、紛争解決にはそのプログラムを作るその道のプロがやはり必要です。それを無視しちゃいかんだろうと思いますね。

    中村哲さんと伊勢崎さんは、やり方は違うけれど、同じ目標を目指してる。
    我々には、このお二人をサポートするために何ができるんだろうか?
    と、私も考えてみるけど、皆さんにも考えて欲しいですね。

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