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オバマの新アフガン戦略 (2)

2010年01月29日 14:37

オバマのアフガン戦略を評価するには、イラクがどうなっているのか?をまず知る必要がある。
なぜなら、イラクでの成果を踏まえての、アフガン戦略だからだ。

イラクの米軍は現在約13万人。ピーク時には17万人規模にも達した。
で、現在のアフガンの米軍は、昨年3月に2万1千を増派したが、それでもまだ6万8千人でほぼイラクの半分規模だ。

では、米軍が倍もいるイラクは、アフガンよりも戦闘が激化していて、治安が悪いのだろうか?
07年には、ブッシュがイラク新戦略を発表して2万人以上を増派した。その時には、日本でも米国内でも、様々な反対があった(オバマも当時は反対した)が、結果はどうだったのだろうか?
果たして、
http://www.21c-journal.net/news/713bato.html
http://blog.canpan.info/okazaki-inst/archive/133
などの批判や予想は当たっていたのだろうか?

イラクの現状は、以下を見れば一目瞭然だ。
http://www.iraqbodycount.org/
http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nobu/iraq/casualty.htm

死傷者数が(むろん絶対数としては依然多いが)、ここ2年ほどで劇的に下がり、治安が回復してきている事がわかる。
イラク・ボディ・カウントによると、イラクで2009年に武装勢力のテロや攻撃などで死亡した民間人は約4500人。03年のイラク戦争開戦以来最少となった。08年の9226人と比べても半数以下。首都バグダッドなどで8月以降に相次いだ大規模連続爆弾テロが死者数を押し上げたにも関わらずである。依然、アルカイダ系武装勢力の大規模テロは続きそうだが、2004年頃から激化し「内戦状態」とまで言われたスンニ派武装勢力との争いはほとんど収まっている。2010年の犠牲者は、さらに低くなるだろうと見込まれている。むろん、不安要素を上げたらキリがないが、状況が好転していることはイラク国民自身も認めている。
http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/090317/mds0903170920007-n1.htm

つまり、ブッシュが増派を決定した頃を転機にして治安が実際に安定してきている。
先に紹介したような批判や予想は事実として外れたわけだ。
今、多国籍軍で今イラクに残っているのは米軍だけ。38カ国が参加した多国籍軍はイラクの安定化とともに撤退し、昨年の7月末に米軍以外のすべてが撤退した。米軍自身も、8月までに戦闘任務を終了させ、来年末月までの完全撤退を目指している。その後は、イラク国軍が治安の維持を担う事となる。

では、なぜそのような治安の好転、外国軍に頼らないイラクの自立が視野に入る状況が生まれたのだろうか?
それを知らずして、オバマのアフガン新戦略や、アフガン増派を批判しても的外れにしかならない。なぜなら、その「イラクの教訓」を生かそうとしたのがアフガン新戦略だからだ。

このオバマが生かそうとしている「イラクの教訓」について、東大作氏は、著書「平和構築 -アフガン、東チィモールの現場から」(アフガンの現状を知り、平和構築を語る上では今一番お勧めしたい本です)の中で、以下のように書かれている。


 イラクでの新国家づくりが泥沼に入っていた07年初頭、ブッシュ政権はイラクへの2万人の増派を決めた。実はその際、イラクにおける反政府武装勢力に対する政策の根本的な転換が行われた。
 当時、イラクのアメリカ軍司令官だったデービッド・ぺトラウス将軍が採用したと言われるその新戦略の骨格は、(1)アルカイダなど国際テロリストグループと手を切ることができる地元スンニ派の武装勢力とは、できる限り対話と和解を行う、(2)和解した武装勢力に対して経済的支援を与える、(3)アメリカ軍も、テロリストの殺害や逮捕を主要目的にする掃討作戦ではなく、一般住民の安全を守ることに、軍の主要目的を置く、というものである。ぺトラウス司令官は、軍人であると同時に、プリンストン大学において政治学博士を取得している政治学者でもあり、戦略家としても現在大きな注目を集めている。
 このイラクにおける戦略転換について、米外交評議会の中東研究者スティーブン・サイモン氏が米国の代表的な外交誌である『フォーリン・アフェアーズ』に論文を寄稿している。それによれば、アメリカ軍は、それまでアルカイダの味方だと断定して激しい攻撃を行い反発を招いていたスンニ派の各部族に対し、「アルカイダと手を切ることができれば和解したい」と対話と交渉を行い、和解に応じた部族に対しては、一人あたり月360ドルもの資金提供を行った。和解に応じたイラクの反政府武装勢力に対し、経済的支援を約束したのである。
 その結果、現在アメリカ軍との和解に応じ、アメリカ軍から月360ドルの資金提供を受けているスンニ派の元反政府武装勢力の兵士や司令官は、実に10万人に上っている。そして、この資金提供のための予算は、年間数百億円に上る。
 前述のサイモン氏は、この「スンニ派との和解」と「和解に応じた勢力への経済的な支援」こそが、07年後半以降、劇的にアメリカ軍への攻撃が減った最大の理由だと主張しており、その見解については、多くの専門家の中でコンセンサスが生まれつつある。



JICAの行った東氏へのインタビュー記事も参考にして欲しい。
http://www.jica.go.jp/story/interview/interview_78.html

つまり、2007年の政策転換で、和解不能な一部のイデオロギーで戦っている過激派と、それ以外とを区別し、過激派の力を削ぎ、影響力を弱める作戦と、それ以外の敵との和解とを同時にすすめた事が、イラクでの事態の好転を生んでいるという事だ。和解不可能な連中のテロ行為はまだまだ続くだろうが、彼らを孤立化させ、イラク一般市民と分断させる事に一定の成功を収めていることがとても大事なのである。

オバマ政権が、この教訓をアフガンでも生かそうとしていることは明らかだ。
オバマ氏が、昨年3月にアフガン・パキスタンの新戦略を発表した際、
「何十年も戦争が続き、極貧にあえぐ(アフガンのような)国では、敵同士の和解なしに平和はあり得ない。イラクで私たちは、アルカイダを排除し、それまで敵だった勢力と手をつなぐことに成功した。私たちはアフガンでも、同じようなプロセスを採用しなければならない」
と明言したことからも明らかである。

これらをみてくると、単純に増派=戦闘の激化=戦争の長期化と決めつけて批判することが、如何に短絡的であるかが見えてきませんか?

次回は、アフガンの現状からのオバマの戦略の可能性ついて考えてみたいと思う。
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オバマの新アフガン戦略(1)

2010年01月28日 16:39


オバマ大統領が昨年12月に発表した新アフガン戦略をどう評価するか?
とりわけ増派の決定をどう見るか?
これは、大変難しい。
この増派した兵をどう使うのか?民生支援、和解プロセスとどう結びつけるのか?によって、結果も評価もまるで違ってくるからだ。

しかし、増派=戦争(紛争)拡大と一面的に捉え、「オバマに裏切られた。ブッシュと一緒だ」とか、これがオバマ大統領の支持率低下の原因だとかといった評価を見ると、「分かってねーなー」と思わざるを得ない。

そこで、何回かに分けて、アフガンの現状にふれつつ、和平構築のあり方を模索しつつ、この問題について考察してみたい。

まずは、批判を展開する前に12月1日にオバマが行った演説を聞いて欲しい。



原文はこちら
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/remarks-president-address-nation-way-forward-afghanistan-and-pakistan

日本語訳はこちら、
http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/091201-obama-afghanistan-speech-japanese.pdf

記録がわりに、以下に日本語訳全文を貼りつけておく。
この件にコメントするなら、まずはこれを読んでからにして欲しい。


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